消光型のエリプソメーター
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歴史的に最初に開発されたエリプソメーターは消光型でした。この構成は偏光子、補償子(コンペンセーター)、検光子の角度を調整してディテクターに入る光を無くするように操作します。 このタイプのエリプソメーターは通常は手動で行われ操作に時間がかかり、また分光での測定は大変困難なことになります。しかしながらこの構成は精度が良く系統誤差の少ない測定が出来ます。 |
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回転偏光子型又は回転検光子型のエリプソメーター
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回転検光子
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消光型や偏光変調型のエリプソ メーターは偏光子の後に回転エレメント (補償子)が入っています。 しかし2つの偏光子(偏光子と検光子)のみで
エリプソメーターを構成することもでき ます。 この偏光子のみの構成には いくつかの利点があります。
- 偏光子は理想的な振舞いをする
- 偏光子は広いスペクトル帯域で無色性である
(波長依存の特性が無い)
- 偏光子のみで比較的簡単に
構築できる
- 偏光子のみの装置は比較的
簡単に光軸調整が出来る
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回転偏光子
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しかしながら位相遅延板(補償子)無しのシステムではいくつかの欠点もあります。
- Deltaが0度や180度付近で感度がなくなる
- どちらかのエレメントが通常10から60Hzで回転させる必要が
ある。適切なSNを得る為に測定に要する時間は、光の強度が 強烈でない限り基本的に回転
スピードによって測定時間が決まってしまう訳ではないので、 エレメントの回転スピードは通常は問題にはならない
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これら2つの構成の操作特性は似たようなものです。しかし回転偏光子型の装置は光源が完全な無偏光 (ランダム偏光)である必要があります。光源の残留偏光を補正しない場合には測定に誤差を生じさせます。 これに対応して回転検光子型の装置はディテクター側で偏光状態の感度について影響を受けやすいのですが、半導体のディテクターを使用するとこの影響をほとんど受けません。この為弊社の装置は光源の残留偏光の影響には関係無い回転検光子型を採用しています。
回転偏光子型又は回転検光子型の装置では、測定波長を設定するモノクロメーターを どこに設置するかの
問題があります。このモノクロメーターはディテクター側か光源側に設置されます。もしディテクター側に設置 されれば環境中の光の影響を受けなくなります。 これは環境中の光が構成機器内に入ってもその光は波長に分割されディテクターで受光される測定ビームと競合するほどの強度にはならないからです。もしモノクロ メーターが光源側にある場合、測定ビームは単色になりディテクターでうけるその他の分割された波長は存在しなくなります。これは逆に環境中に存在する光の全ての波長がモノクロメーターの測定ビームと競合することを意味します。
環境中の光の除去という点から見るとモノクロメーターをディテクター側に設置することに利点があります。
しかし光源の設計に問題が生じてしまいます。 まず第1にモノクロメーターは偏光の影響を大きく受けてしまいます。第2に測定ビームがモノクロメーターを 通過した後に受光することはビーム強度を減少させてしまいます。第3にサンプルに入射する光が白色光で 光に感度のある材料が感光してしまいます。
弊社の分光エリプソメーターであるVASEシリーズはモノクロメーターを光源側に設置しています。回転
検光子型の光学構成との組合せでVASEは光源の残留偏光に影響されず、またディテクターの偏光感度が ない装置になっています。環境中の光の問題は光チョッピングを行いディテクターに同期させる技術を用いて解決しています。
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位相変調型のエリプソメーター
このタイプのエリプソメーターは、50KHzという高い周波数で動作する、典型的な時間依存の位相遅延器で ある光弾性変調器を使用しています。この高い変調周波数によりこの光学構成の主な利点は早いということで、理論的なデータ収集レートは1点あたり10msecとなります。
しかし満足できるSN比を得るには、レーザーの様な強い強度の光源を使うか、または測定の積算時間を長く するかが必要です。位相変調型のエリプソメーターで分光の測定をするには、変調の振幅を各波長に合わせて調整する必要があります。その為単色の光を入射させる必要があり、複数波長を同時に測定するような 分光エリプソメトリー測定を行うことは出来ません。 この場合モノクロメーターで波長を変えるための機械的な制限によって高速変調を行う利点は失われてしまいます。
弊社のモノクロメーターは他の市販の位相変調型分光エリプソメーターよりも VASE 装置の測定を早くする ために波長を早く変えられるように特別に設計したものです。
特定の用途で 高速の測定が必要な場合は、必要な波長レンジ全てを同時に測定する M-2000® の様なダイオードアレイ式のエリプソメーターが最良の選択といえます。
一般的に位相変調型の分光 エリプソメーターはキャリブレーションすることが難しく高精度の測定には大変 安定した変調器が 要求されます。またPsiが0度や45度付近になるとデータにノイズがのりやすくなってしまいます。 (この弱点はもう1つのディテクターを追加した複雑な二重ディテクターシステムとすることで解決します。)
従来の回転エレメント型のエリプソメーターは、Deltaが0度か180度付近になると精度が落ちてきます。
位相変調型のエリプソメーターも似たような欠点がありPsiが0度か45度付近になると精度が落ちます。 回転エレメント型のエリプソメーターでDeltaの感度を克服するには、補償子を追加することで可能です。 これによりDeltaのは0-360度のフルレンジで感度を持つようになります。更なる詳細は弊社のニュースレターに掲載された論文 補償子 を御覧ください。
一般的に位相変調型のエリプソメーターは組立てやキャリブレーションが難しく、変調器は温度の影響をうけてしまいます。相変調型のエリプソメーターの回転エレメント型に対する唯一の利点は、機械的に動く部分が
無いことです。しかしながら現在のベアリング技術と高い製造品質により、機械的な部品が壊れることは ほとんどありません。
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回転補償子(コンペンセーター)型のエリプソメーター
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回転補償子(コンペンセーター)型の光学構成は、回転検光子型の光学構成の欠点を埋め合わせるものです。 この構成はさらに利点が追加され、エリプソメトリーパラメーターであるPsiとDeltaの全てのレンジ (psi=0-90度, delta=0-360度)を精度良く測定する、入射や受光の際に残留偏光の影響が無い (入射側は 固定の偏光子で受光側も固定の検光子であるため)、そして偏光解消の効果を直接測定 できるということが挙げられます。
回転補償子型のエリプソメーターはこの構成の利点が良く知られていたにもかかわらず、つい最近になって
商品化されました。これは主に広いスペクトル帯域で理想的なリターダンスを持つ(90度のリターダンス)機械的に回転可能な補償子を作ることが困難と思われていたためです。この問題へ挑戦しつづけた結果、いくつかの方法で解決され IR-VASE と M-2000 の装置が出来ました。
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